「ハンス・コパー展」がそろそろ終わってしまうので、夫と二人汐留まで行ってきた。コパー展、夫は造形にすごくひかれるものがあったらしいけど、私が観たいと思った理由はただ一つ、「ALSになってからも制作を続けていた」っていうところ。
50代は多くの人にとって「苦悩の時代」なんじゃないかと、近ごろひしひし思うことが多くて(多かれ少なかれ、誰もが「うつ」めいたものに襲われる気がするのよ。それはホルモンのせい? 死が近くなるせい? 子離れのため? 理由はわからないけど50代は精神の危機ってすごく思う。いや、その先がどうなるのかはまだわからないんだけど)、その50代で死に向かう病を得てなお「投げずにつくり続けた」ってところに、ちょっと近づきたい気がして、「ほんとに行くの?」と当日朝まで本気じゃなかった夫を誘って出かけていった。
で、話はそれるけど、ほとんど家に二人でオコモリのわが家。なにげなく「出かける」と書いたその裏には、皆さんの想像を超えた努力が陰にあるのよ。
近ごろのお出かけには、行く手を阻むこだまちゃんの存在がデカイ。なにしろ大きな犬小屋(=夫の仕事場)の、網戸もサッシも「手で開けちゃう」んだもの。トイレは庭と決まっているので、庭側の戸を少し開けたままで、あとの戸の前には障害物を置いて開けられないようにして、エアコンを入れ、水もたっぷり(夫はさらに寂しくないようにとラジオもつけたがるが、それはやめてもらった)。それだけセットしてようやく出られる。お互いの仕事の穴を縫い、こだまの安全を確保して(&え、置いてくの?という寂しい目も振り切って)、台所の火の確認、ドアのカギOKで、やっと出る気になれるけれど、この頃もうだいぶ陽は高い。ああ、暑い。
ということで、着いたときはもうお昼どきだった。展示を見る前に、まずは腹ごしらえと、ネットで検索しておいたマクロビオティックのレストランに入る。ワンプレートの玄米と野菜のランチを試してみたけど、ごめんなさい。野菜の味も玄米も、たぶんコーフーっていうグルテンのハンバーグも、「・・・」だった。夫の個展のときに入った西荻の「米の子」っていうお店のほうが、ず~っとおいしかった。今回の所は大手の資○堂さんがやっているらしいから、細かいところまではやっぱりこだわりきれないんだろうなあ。
まあね、この手のお店がまるでなかった時代に比べれば、「おしゃれ」な存在としてあちこちにたくさん出てきてくれたことは、極端な外食嫌い(イナカじゃラーメン屋とそば屋にしか入らない)を連れて歩く身には、とても助かったんだけど。
ということで一応おなかも膨らんで、会場付近を見回せば、一度も来たことがなかった汐サイトは、まるでコンクリートの海の中だった。おしゃれな中庭にテーブルと木立ちが少し。そよぐ緑を演出したんだろうけど、あんなにまわり中がコンクリートじゃ風は熱風だし、とても「憩いの庭」じゃありえない気がする。
目指すパナソニックビルはその先だった。ここのギャラリーは、娘いわく「照明が技術を尽くしたものですばらしいはず」なんだそうだけど、比較するものがないしよさがよくわからなかった。ビル内の立派な住宅設備モデルなんかを眺めつつ、エアコンも効いていて自由に使える大きな休憩スペースでは、こういうところでホームレスの人が休憩できたら、猛暑のなか命拾いできるだろうに、守衛さんがあちこちで「変な人は入っちゃダメ」と見張っているから、とても入れてはもらえないなあ、なんかもったいないなあ・・・などと思いつつギャラリーへ。
展示は、それなりによござんした。展示数が少ないけど入館料が500円で、まあ納得。結局、人の波が多すぎてコパーに感情移入するとこまではできなんだ。まあ、買ってきた図録でじっくり対話することにしよう。夫の作品もこんなふうにたくさんの人に見てもらえることがいつかあればねえと、ちょっと夢想したんだけど、人生もここまで来ちゃうとまあ無理だな。
帰りは、すぐこだまのもとへ帰りたがる夫を、「ダメダメ、気になっていたお店を覗いてからにしよう」と説得。ネットで見ただけのお店を探す。で、これがいけなかった。炎天下を歩き、着いてみれば「アウト」の判定を店内にも入らず下す御仁がいて、お店探検は徒労に終わる。いろんな意味で頭が痛い。二人ともちょっと熱中症ぎみ。
帰ってきたら、Nさんから「お中元」の無農薬キュウリがどっさり届いていた。形が悪いからと安く買い叩かれて売るのがイヤになったって。この野菜不足のときなんだから、もっと売れそうな気がするけどなあ。早速ぽりぽりかじったら甘くて究極のキュウリの味だった。こだまは大好きな夫の、残り少ない髪の毛をぺろぺろなめ続けている。「とうちゃん、寂しかったんだよぅ」と言ってるみたい。
幸せってのは、足もとにあるんだねえ。チャン、チャン(いつもの手法です、はい)。
追伸:先日の「健診」騒ぎ、皆様の激励どおりの結果になりました。不整脈で要観察ですが、まあさほど心配せず様子をみてよいとのこと。メタボ関連じゃなくてひとまずほっとしました。ご心配くださった皆様、お騒がせ失礼いたしました。またご心配ありがとうございました。よく寝て気持ちを明るくもってなんていう理想的な生活を、この仕事枯れの中おくれるかどうかっていったらまるで保証の限りじゃありませんが、ここまで何とか維持してきたんですからこの先も何とか生き抜かねば。宣告ショックで始めた「計るだけダイエット」も、気を抜かず続行中です。成果が上がれば胸張って報告しちゃうんですが、どうなるかな。