ゆうべ。
近頃は空気が乾いてきて夏に比べりゃずいぶん過ごしやすくなったというのに、このウツウツとした気分はなんなんだ?!とブツブツごねていたら、夫が奥から本を出してきた。
多田智満子さんの『十五歳の桃源郷』。
早速パラリパラリとめくってみる。小気味いい簡潔な文の運びにすぐひきつけられたけれど、もう夜中の2時近く。最初の2節ばかり読んであとは翌日からのお楽しみにとって床につく。
多田さんはもう亡くなってるんだよなあ。生き生きとした文章を書いたこの人が、もうこの世にいないことを不思議に思いながら眠りについた。
さして変わらぬ朝に、1杯の冷たいさし水。
1歩後ろに下がってものごとをとらえることは大事なんだな。
仕事の上での人間関係のトラブルに加え、ちょっとしたことで自覚させられた裏方仕事の哀しさ(あれはお父さんが作ったビルだと息子に話す出稼ぎの大工さんの哀しさに近い)、先行きの見えない不安、いろいろあるんだけど、そんなものだけで私の人生を色づけしちゃいかんのだ。
優等生顔で世間に出ようと思わないこと。
世間並みの華やかさのすきまを埋めるものの中にこそ、温かいものがあることに気づくこと。
私は私らしく、だ。
自分の持っているもので生きていこうとすればいい。
1歩下がって世間を眺め、別の世界が広がっていることに気づく努力が必要だな。
要は、視点をどこにおくかってこと。